副住職の小話

寺院の荘厳について

 延命院は、真言宗豊山派に属する密教寺院です。密教寺院は概して華麗な荘厳がなされ、その意味する所は深遠であります。ここでは、当院の法具について、簡単な解説を付したいと思います。

 皆さんの目の前の天井に吊るされている大きな金色の傘のようなものは、天蓋(てんがい)と申します。昔から、インドでは日差しが強いため、高貴な人の上には傘をさしかけていました。目の前の天蓋は、僧侶に差すもので、人天蓋と呼ばれ、本尊さまの上に差されているものを仏天蓋と申します。

 天蓋の両脇にある細長い飾りを幢幡(どうばん)といいます。字のとおりこれは幡のことです。幡とは旗印のことで、昔の軍旗が形を変えたもので、ここに本尊様がいらっしゃいますという印と同時に、智恵の幡の下あらゆる煩悩の魔軍を打ち破るぞ、という象徴として掲げられています。

 正面の内陣(本尊が安置されている一段高い部分)をご覧下さい。ここにある壇のことを大壇といい、この前に座って、導師は修法を行います。この上には、仏様にお供えするための供物、仏様の口を漱いだり足を洗っていただくための水などがのっています。

 法要とは、至極簡単にいえば、導師が様々な仏様を壇上にお招きし、供物を持って接待し、故人をよろしくお願いしますと祈るものです。ですから、寺院の中は、仏さまに粗相のないよう、華麗に荘厳しているのです。また、多くの法具は金色です。これは、金はこの世に存在する金属の中で変質しないで、いつまでもその輝きを持続しています。その性質から、永遠に不滅で不変である「仏の教え」の象徴として金色を多用しているのです。

 このような華麗な荘厳の中、皆様お一人お一人が、大日如来の浄土である密厳国土におわすと感じられ祈りを捧げていただければと存じます。